貯蓄型保険で資産形成はアリ?ナシ?

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複雑で分かりにくい保険。世の中には様々な種類の保険がありますが、一般的に保険というと生命保険をイメージされる方も多いのではないでしょうか。

実に国民の8割が加入している生命保険ですが、大きく分けて、少ない保険料で保障が受けられる「掛け捨て型」満期時や解約時に保険料の一部が返ってくる「貯蓄型」に分けられます。

掛け捨て型の保険は、何もなかった場合、1円も保険料は返ってきません。一方、貯蓄型は、保障と貯蓄が合わさっていて、リスクに備えつつ保険料を運用してもらうことで利息が付いて保険料が返ってきます。

掛け捨て型は1円も戻ってこず、貯蓄型は利息が付いて保険料が戻ってくるわけですから、掛け捨て型の保険は損をするイメージが強いのか、貯蓄型の保険の方が好まれる傾向にあるようです。

貯蓄や資産形成の手段として利用される貯蓄型保険ですが、資産形成としてアリなのでしょうか?ナシなのでしょうか?

少し見ていきましょう。

そもそもの保険の基本的な捉え方

保険って色々な種類がありますし、私たちにとって保険は身近な存在ですが、そもそも保険はどういうものなのでしょうか?

それは、「貯蓄では足りない不測の事態に備えるために加入するもの」です。

私たちは普通に生活をしているだけで様々なリスクに囲まれています。資産家は大丈夫かもしれませんが、多くのリスクに貯蓄だけで対処するのは限界があるので、みんなでお金を出し合って困った人を助けよう、というのが保険の基本的な考え方です。

(余談ですが、保険と同じようなものに「共済」がありますが、共済は組合会員同士の相互扶助によって成り立つ非営利の保障事業です。)

あくまでも保険は、何かあった時のリスクに備えることが基本であって、そのリスクを保険会社に引き受けてもらうのです。

払った保険料が返ってこないから払った分損をした!という気持ちは分かりますが、そもそも保険は、貯蓄ではカバーできない部分に対処するものであり、払った保険料に少し色を付けて返してもらうために加入するものではないということを理解しておきましょう。

貯蓄型保険の主な種類

貯蓄型保険は、リスクに備えつつ保険料を運用してもらって利息が付いて返ってくるもので、保障と貯蓄が一体となった保険商品です。

契約期間中に万が一のことがあれば、契約内容に沿った保障を受け取れ、掛け捨て型とは違い契約期間内でも解約すれば解約返戻金が支払われるのが特徴です。

保険料の払い込み期間も商品によって様々で、「保険料は一生上がらないけど一生払い続けるもの」や「60歳まで払い込みする」などのタイプがあります。

主な貯蓄型保険を見ていきましょう。

終身保険

死亡保険とも言い、被保険者が死亡した時には保険金を受け取れて、満期が無く解約しない限り保障が一生涯続く保険です。解約した場合は払い込み期間や金額に応じた解約返戻金が受け取れます。同じ金額を保険料を払う場合、掛け捨て型の方が保障は大きくなります。

保険料の払い込みは、60歳など一定の年齢で払い終えてしまう有期払いと、一生保険料を払い続ける終身払いの2つがあります。

払い込み期間中の解約返戻金を抑える代わりに、保険料を安くする「低解約返戻金型終身保険」もありますが、どちらも掛け捨て型に比べて保険料は高くなります。

養老保険

養老保険は生命保険に分類される保険です。老後を養うための保険として養老保険と呼ばれています。
終身保険と似ていますが、異なる点は満期があり、保険期間中に被保険者が存命場合、満期保険金が支払われる点です。
被保険者が死亡した場合、死亡保険金が受け取れて、存命のまま満期を迎えると満期保険金が受け取れて、満期前に解約をしたら解約返戻金を受け取れるのが特徴です。

保険料は、掛け捨て型の定期保険はもちろん、終身保険よりも割高になります。

学資保険

学資保険は、稼ぎ手の死亡に備えながら、子供の学費を準備する保険です。
学資保険も終身保険と同様、固定金利の積立型の保険なので、物価が上昇するインフレリスクによって学費が上昇しても受け取れる保険金の額は変わりません。

日本金融政策公庫が発表した調査によると、高校入学から大学卒業まで子供一人当たり「953万円」の費用があると発表されました。

個人年金保険

個人年金保険は、国民年金や厚生年金を補うために利用されます。
毎月一定額の保険料を払い、60歳や65歳など契約時に約束した年齢から年金を受け取ることができます。

代表的なものに確定年金と終身年金があり、終身保険や学資保険同様、固定金利の商品ですので物価や金利が上昇したとしても受け取れる額は変わりません。

貯蓄型保険のメリット

貯蓄型保険のメリットを見ていきましょう。

保障もあり資産形成もできる

貯蓄型保険は、万が一のリスクに備えながら保険料を運用してもらえるので、保障を確保しながら資産を作ることができます。

終身保険の場合、保障期間中に死亡すれば契約内容に応じて死亡保険金が支払われ、途中で解約しても契約内容に応じた解約返戻金が受け取れます。

自動的に貯蓄ができる

保険料は毎月自動で保険料が支払われるため、半強制的に貯蓄をすることができます。

貯蓄があまり続かない方も、早期解約をすると元本割をしてしまうので長期の貯蓄ができます。

相続税対策ができる

貯蓄型保険は相続税の節税も可能です。
被相続人の死亡によって受け取った保険金は、原則として相続税の課税対象になりますが、非課税枠内であれば節税することが可能です。

相続税の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」で認められているので、上手に活用することによって相続税を節税することができます。

貯蓄型保険のデメリット

保険料が高い

貯蓄型保険は、掛け捨て型と違い、保障に当てるお金とお金を戻す解約返戻金の機能を兼ね備えているため、掛け捨て型保険よりかなり保険料が高額になる傾向です。

生涯で見たときに払いこむ保険料が1000万円ほどになることもあるので、「保険は人生で二番目に高い買い物」と言われる所以でもあります。

途中で解約すると元本割れする

多くの貯蓄型保険では、途中で解約することにより戻ってくる解約返戻金が、払い込み累計額より少なくなる元本割れをすることがあります。

低解約返戻金型では、一定期間の間は解約返戻金が少ないので、元本割れを回避するためには長期間にわたって保険料を払いこむ必要があります。

インフレには太刀打ちできない

多くの貯蓄型保険は、基本的に長期の固定金利金融商品で、将来受け取れる保険金は契約時の予定利率に基づいて受け取ることになるため、受け取れる保険金は契約時に決まってしまうということになります。

国は年2%のインフレ率を目指していますが、インフレとは物価が上昇してお金の価値が下がることですので、物価が上昇し続けた場合、モノの値段に対して将来受け取れる保険金の価値が下がってしまう可能性が高いです。

インフレの予測はできませんが、貯蓄型保険はインフレには太刀打ちできないと理解しておきましょう。

大きくお金を増やすのは難しい

今は低金利の時代です。貯蓄型保険は、契約時に約束する運用利率である予定利率が低金利の影響で下がっていますので、資産形成には向きません。

終身保険には有期払いと終身払いの2通りがありますが、終身払いの場合、生涯にわたって保険料を払うため、人生100年時代の今は保険金より払い込む保険料の方が高くなる恐れもあります。

解約返戻金も10年の払い込みでも少しだけしか払い込み保険料を上回らないので、特に若い世代にとっては貯蓄型保険で資産形成には無理があります。

不透明な手数料構造

貯蓄型保険には払い込む保険料に「付加保険料」「純保険料」が含まれます。

知っている方は多くないと思いますが、保険会社も営利企業ですから、会社を維持するために経費や儲けも保険料に上乗せしています。このうち付加保険料が会社の維持費や儲けにあたり、純保険料が死亡保険金などの保険金を支払うものにあたります。

ほとんどの保険会社は手数料の内訳を公表しておらず、長期の資産形成では手数料を低く抑えることが鉄則になるため、手数料の不透明さは否めません。

まとめ
保険は掛け捨て
貯蓄は別の金融商品

冒頭でも言いましたが、保険の基本は万が一の事態に備えるものです。万が一の事態に損をするか得をするかの考えを入れてしまうと、適正なお金の管理ができなくなってしまいます。

貯蓄型保険は、インフレリスクに太刀打ちできないことや、途中解約によって元本割れをしてしまうことと、今の低金利時代には大きく資産を増やすことは期待できないため、資産形成や運用手段として多くのデメリットがあります。

保障だけを考えれば掛け捨て型の方が格段に毎月の保険料も安くなりますし、資産形成や運用は2%以上の利回りで運用できる金融商品の方が手数料やコストを無駄に払うことなくお金を増やすことができます。

貯蓄型保険は相続税対策としては有効なので、どういう目的でどういった保障が必要なのかを、しっかりと家庭内で考える必要があります。

貯蓄と保障は分けて考えましょう。資産形成は保険ではなく、別の金融商品の方がコスト的にも向いているので、あとで後悔しないようメリットとデメリットを理解しておく必要がありますね。

それでは。

卯木 惟史

卯木 惟史

ファイナンシャルアドバイザー/ 資産形成・運用・保全・継承に関するサポートをしています。

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PROFILE

 

■卯木惟史

■ファイナンシャル・アドバイザー

■ファイナンス教育事業

■HP制作事業

■通信・共済事業

■お寺の19代目・現副住職

 

ど田舎のお寺生まれで今はファイナンシャルアドバイザーとお寺の二足の草鞋。

 

大学を卒業し、飲食業界・不動産業界・ブライダル業界を経て独立。

 

個人向けに資産形成・運用のアドバイザリー業務を行いながら、豊かな未来への架け橋となるようファイナンス教育を行っています。

 

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